好きな曲について喋る 1/3

Music Askなるものを見かけて、毎分毎秒脈絡なく好きな音楽について喋りたい人間は、やらずにはおれなかった。

Music Ask 1. A song you like with a color in the title 2. A song you like with a number in the title 3. A song that reminds you of summertime 4. A song that rem… | Journal writing prompts, Songs, Writing challenge

付記している訳は筆者訳。

1曲ずつ語ってたらけっこうな文字数になったので、3回に分ける。書き切れますように。

 

1. A song you like with a color in the title(曲名に色が入っている好きな曲)

水色の街 / スピッツ

会いたくて 今すぐ 間違えたステップで 水色のあの街へ

スピッツでいちばん好きかもしれない。スピッツは全体的に「青い」イメージがあるけれど、わたしの好きな青を想起させられるのはこの曲。「頸の匂い」の「くび」が「頸」なのがいい。皮膚越しの骨の質感とかが伝わってきて。

 

2. A song you like with a number in the titel (曲名に数字が入っている好きな曲)

五月の蠅 / RAD WIMPS

空が蒼いように 華が散るように 君が嫌い 他に説明は不可

君が主演の映画の中で 僕はそう最強最悪の悪役

わたしは「前前前世」はRADである必要がないと考えているタイプのRAD好きなのだけど、五月の蠅は新海誠でRADを知った層を殴るのにちょうどよい歌だと思う(何を言っているの?)。最悪すぎる思想の開陳はさておき、「へっくしゅん」にしろ、「PAPARAZZI ~*この物語はフィクションです~」にしろ、わたしは憤りや屈託や呪詛をうたう洋次郎が好きだ。好きな人間を神聖化する男、その信仰が壊れたときがいちばん見応えがあるから……。

 

3. A song that reminds you of summertime (夏を想起させる曲)

そなちね / Temparay

あの夏霞の海岸通り タバコに火をつけたった1人

こめかみの奥向けた自由が 終わりを告げる風のしらべ

夏というより、晩夏だ。いつか絶対に映画を作ってほしいクリエイティブ集団PERIMETRONがMVを手掛けていることから知ったのだけど、この曲をきっかけにTemparayのことが大好きになる。胡乱なコード進行から始まるイントロからは想像もつかないサビが展開されて、高湿度な暑さの中に一抹のさわやかさをとらえる瞬間を想起させられる。韻の踏み方も気持ち良い。

あと前述のMVもめちゃくちゃすごい。映画じゃないのが勿体ないくらいの世界観。

youtu.be

 

4. A song that reminds you of someone you would rather forget about(忘れたい人を思い出してしまう曲)

コンパートメント / 松任谷由実

やがて私は着く 全てが見える明るい場所へ

けれどそこは朝ではなく 白夜の荒野です

忘れたい人、特に思い浮かばなかったので、忘れたい人が忘れられなくて眠剤自殺する女性を歌ったユーミンの曲をこの場を借りて紹介します。

ユーミン、大衆的には「優しさに包まれたなら」とか「恋人はサンタクロース」とかの印象が強いと思うけど、あの言語野と声色で人間の死や愚かさや諦念に言及されると恐怖や悲嘆を通り越して畏敬の念をいだくような曲が仕上がるのである。ユーミンへの「畏敬」を語り出すとそれだけで一記事書けてしまうので、別の機械に……。

眠剤自殺を仄めかす歌詞や雑踏の演出もまあすごいんだが、引用しているフレーズは特にユーミン言語野の最骨頂だと思う。これまで出会ったあらゆる歌詞の中でいちばんうつくしい。自分の墓石に掘りたい。「荒野」は「こうや」ではなく「あらの」と読む。このフレーズで終わるんです、この曲。夢の中でしか見られないような情景を残していく。

ちなみに「ジェラシーと云う名の悪魔」と迷った。

「離れていくことが正しいのならなぜ出会ったの」

 

5. A song that needs to be played LOUD(大音量で聴きたい曲)

Breath of a Serpent / ludoWic

youtu.be

Katana ZEROというゲームの挿入曲(インスト)だ。Katana ZEROはインディーズ・ゲームで一世を風靡したHotline Miamiをオマージュしていて、麻薬みたいな音楽を聴きながらいかにスタイリッシュに殺人をこなすかということに耽溺できるアクション・ゲームである。ただそういったプレイヤーの習性を明確に皮肉ったHotline Miamiとは異なり、メタフィクショナルな演出と共に展開されるSF的なストーリーが(略)曲を紹介する記事なこと忘れてた。ともあれ全体的に極めて秀逸なKatana ZEROサウンド・トラックの中でも、個人的にいちばん血湧き肉躍る一曲だ。曲名を直訳すると「大蛇の息遣い」なのだけど、この曲がかかるシーンもあいまって、じっとりとその機会を窺う巨大な殺意を思わせる曲調は、低音域ブーストして大音量で聴きたくなってしまう。Katana ZERO、(たぶん)(恐らく)(願わくば)(広義には)そろそろDLCが出るので、そのタイミングでまた触れる人が増えたらいいな。

いや本当にサウンド・トラックが最高なんですよ、Katana ZERO。

 

6. A song that makes you want to dance(踊りたくなる曲)

Beat Drop / Simon Curtis

Let it in your body and the party won't stop

'Cause it's seven kinds of naughty when you let the beat drop

踊らないので、悩んだ。脳内で推しを躍らせがちな曲を選んだ。Simon Curtisの曲は外れがなくてどれも好きなのだが、Beat Dropが1位、ほかが同率2位って感じだ。そのくらいSimon Curtisの曲って謎の安定感がある。Beat Dropはサビのスマートな疾走感が良い。

 

7. A song drive to(ドライブで聴きたい曲)

Never coming home / Sting

A place to sleep, a place to stay

Will get her through another day

「夜の高速道路で聴きたい曲」というジャンルが存在すると信じているのだけど、この曲はとりわけイントロの時点で夜の中を流れていく照明灯が見える。Stingの引き出しの多さには驚く。静かでシリアスな曲調ながらも、間奏のピアノも含めて終始軽やかな疾走感が横たわっているのは、半ば衝動的に恋人の元を去る女のことを歌っているからかもしれない。高速道路を抜けたら「Stolen Car」を聴くのも良い。

 

8. A song about drugs or alcohol(薬か酒にまつわる曲)

MARENOL / LeaF

メアノール錠、
その薬はお医者さんから処方されたものではなく私が勝手に買った抗鬱剤だ。

(インスト曲のため、歌詞ではなく公式の曲解説からの引用)

youtu.be

いわゆる音ゲー界隈曲なんだけど、MVがR-18Gな上に動画内警告から絶叫までの猶予が短すぎて笑ってしまう。音ゲーの譜面も頭おかしい。ダブステップとヴァイオリンの組み合わせに弱いんだよね、deemoのMarigoldとか。後半で時計の秒針のような拍打ち?がわずかにずれていくのが、ドラッグ中毒演出として似つかわしいと同時に音ゲー殺しでかなり良い。

 

9. A song that makes you happy(幸せになれる曲)

曖昧で美しい僕たちの王国 / For Tracy Hyde

白い城壁があり 汚したい欲がある

口にさえしなければ 怯えることもない

なんだろう、「好きな曲を聴いて幸せ~」という感情はあるけど「幸せになりた~い」というモチベーションで曲を聴くことはあまりないので、これもやや悩んだ。

For Tracy Hydeのことは「あたたかくて甘い海」で知ったのだけど、甘めのボーカルとシューゲイズ、「海」に言及されることの多い歌詞から、夏の海辺、足の裏にざらつく砂、みたいな印象が強い。独りよがりな抽象表現が増えてきたな。

この曲はイントロからずっとスキップしてるような晴れた日に自転車で走っているような爽やかなリズムが刻まれているんだけど、男性ボーカルと女性ボーカルの感傷の塩梅が良くて、いたずらに明るい曲よりもこのくらいのテンションで寄り添ってくれる曲の方が顔をあげられるよねみたいな、そんな気持ちで選んだ。

 

10. A song that make you sad(悲しい気持ちになる曲)

日曜日の太陽 / THE NEWTRAL

思い出にしがみつく僕を見透かしたように

太陽はやけに僕を突き刺していた

いやもう「なるたる」のED曲とか、そんなことは関係ない。ハーモニカが軽快に鳴っているのにこんなに悲しい曲をほかに知らない。良く晴れた日曜日に公園のベンチとかにひとり座ってぼーっとしていると、脳裏にこの曲が鳴り響いて急に人生を俯瞰してしまうことがままある。何て曲だ。

「いつか君と話していた~」からの声色の変化がすごくて、明るい曲調でももう誤魔化し切れない悲嘆に溢れていく。サビが終わってAメロを繰り返して、ああそれでも人生は続いていくんだよなという思いに駆られてからの、「君はもういないと知ったんだ」でぱったりと音が途絶えてしまう余韻は凄まじい。

「日曜日の太陽」って曲名だけでも正直ちょっとくらう。坂本真綾の「月曜の朝」くらいくらう。